こんにちは、Soraです。前回の記事でプロ選手たちの実機材を紹介しましたが、今回はespologらしく「お金」の視点でもう一段掘り下げてみます。ゲーミングデバイス紹介記事はどこも「高性能モデルのおすすめ」で終わりがちですが、実際に価格を積み上げて比較すると、投資すべき場所とそうでない場所がかなりはっきり見えてきます。
まずは両セットの内訳を一覧で比較してみます。
| カテゴリ | 20万円セット(Peace選手 / UNLIMIT) | 8万円セット(Asuna選手 / 100 Thieves) |
|---|---|---|
| マウス | Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2(¥19,982) | Razer DeathAdder V2(約¥7,000) |
| キーボード | Wooting 60HE(¥35,300) | Corsair K70 RGB Cherry MX Red(約¥15,000) |
| モニター | SONY INZONE M10S(¥120,000) | ZOWIE XL2546K(約¥55,000) |
| イヤホン | SONY INZONE Buds(¥20,800) | ─ |
| 合計 | 約¥196,082 | 約¥77,000 |
「20万円セット」の中身
UNLIMITのPeace選手が使う機材を単純に足し算してみます。マウス「Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2」が実売19,982円、キーボード「Wooting 60HE」が35,300円、モニター「SONY INZONE M10S」が120,000円、イヤホン「SONY INZONE Buds」が20,800円。マウスパッドを除いても合計196,082円、ほぼ20万円クラスの投資です。プロチームがスポンサー契約や支給で機材を揃えられる立場だからこそ組める構成とも言えますが、個人で一から揃えるにはかなりの覚悟が必要な金額です。内訳を見ると分かる通り、この構成で最も高額なのはモニターの120,000円で、全体の6割以上を占めています。これはFnaticと共同開発した480Hzモデルという特別な位置づけの製品だからこその価格で、一般的な240Hz〜360Hzクラスのゲーミングモニターであれば5〜8万円程度に収まることも多く、必ずしも「プロ機材=この価格」というわけではない点は補足しておきます。
「8万円セット」でも世界一になれる
一方でEWC 2026 VALORANT部門を制した100 ThievesのAsuna選手の機材を積み上げると、マウス「Razer DeathAdder V2」が実売7,000円前後、キーボード「Corsair K70 RGB Cherry MX Red」が15,000円前後、モニター「ZOWIE XL2546K」が55,000円前後で、合計するとおよそ77,000円。先ほどのセットの半分以下の投資で、世界最高峰の大会を制しています。もちろん個人の技量や慣れの要素が大きいのは間違いありませんが、「高いギアを揃えないと勝てない」という思い込みへの、かなり強力な反例だと思います。
1〜2万円台のエントリーモデルも侮れない
ここ最近の市場を見ていても、この傾向は加速しています。例えばロジクールが2026年7月16日に発売した「G304 X SUPERLIGHT LIGHTSPEED」は、実売12,980円ながら本体重量59g・HERO 44Kセンサー・ポーリングレート対応のワイヤレスモデルで、数年前なら3万円クラスでしか手に入らなかった軽さと精度を備えています。エントリーモデルにもハイエンドの技術がどんどん降りてきているため、「安いから性能が悪い」という前提そのものが崩れつつあるというのが2026年時点の実感です。
そもそも「機材で強くなる」は幻想か
eスポーツシーンを見ていると定期的に話題になるのが「機材でどこまで勝てるようになるか」という論争です。今回の比較でも分かる通り、価格差2.5倍のセットが両方とも世界大会を制しているという事実は、機材のスペック差が結果を決定づける要因ではないことを示しています。もちろん一定水準以上の性能(低遅延・高精度センサー・安定したフレームレート)は前提条件として必要ですが、そこから先はプレイヤー自身の反復練習と経験値がものを言う世界です。逆に言えば、機材への投資で得られるリターンには早い段階で頭打ちが来るということでもあります。予算に余裕がない学生や社会人の方こそ、まずは基本性能を満たす手頃な機材で練習量を積み、余裕ができたタイミングで少しずつアップグレードしていくのが、遠回りに見えて実は最も効率の良いルートだと思います。
「長く使う」ことも立派な節約術
Asuna選手のDeathAdder V2やCorsair K70は、発売からかなりの年数が経ったモデルです。ここから学べるもう一つの視点は「型落ちを狙う」「気に入ったものを長く使う」というシンプルな節約術です。ゲーミングデバイスは毎年のように新モデルが出ますが、センサーや軸の基本性能は数年前のモデルでも実戦レベルでは十分なことがほとんどです。型落ちモデルはセールや型番変更のタイミングで大きく値下がりすることが多く、最新モデルの2〜3割引きで手に入ることも珍しくありません。特に狙い目なのは、新モデル発表直後の型落ちセールと、大型セール時期(夏・年末年始のセールシーズンなど)が重なるタイミングです。今回取り上げたG304 X SUPERLIGHT LIGHTSPEEDのような新モデルが出るということは、前モデルの「G304」が今後値下がりしていく合図でもあります。新製品のニュースは値下げのサインとしてチェックしておくと、お得な買い物につながりやすくなります。むしろ数年単位で使い倒すことを前提にすれば、1年あたりのコストで考えると最新の高額モデルより型落ちの方が安く済むケースも多いのです。ただし型落ち・中古を狙う際には注意点もあります。マウスはクリックスイッチの耐久性が消耗品的に劣化するため、あまりに使用感の激しい中古品は避けた方が無難です。イヤホンやヘッドセットのような直接肌に触れる製品は、衛生面を考えると新品での購入をおすすめします。逆にキーボードやモニター、マウスパッドは状態さえ良ければ型落ち・中古でも狙い目の製品と言えるでしょう。
予算別プランを組んでみる
ここまでの内容を踏まえて、実際に予算別のプランを組んでみます。なお、ここで挙げる金額はあくまで目安です。為替やセール状況によって実売価格は変動しますし、周辺機器のセットではなくPC本体のスペックも当然プレイ体験に影響します。今回はあくまで「マウス・キーボード・モニター」という周辺機器の範囲に絞った比較である点はご了承ください。まず初めてゲーミングデバイスを揃える場合の「最初の3万円」プランは、G304 X SUPERLIGHT LIGHTSPEEDのような1〜1.5万円クラスの軽量ワイヤレスマウスと、5,000〜8,000円程度の標準的なメカニカルキーボード、そして手持ちのモニターがまだ60Hzなら中古のリフレッシュレート144Hzモデルを1万円台で探す、という組み合わせです。これだけでも普通のオフィス向け機材からの体感差はかなり大きいはずです。
次に「本気で上を目指す6〜8万円」プランでは、Asuna選手の構成に近い形で、ミドルレンジのマウス・キーボードに加えて240Hzクラスのゲーミングモニターへ投資します。ここまで来ると機材面でのボトルネックはほぼ解消され、あとは練習量とゲームセンス次第という領域に入ります。最後に「妥協したくない15万円以上」プランは、軽量無線マウス・ラピッドトリガーキーボード・高リフレッシュレートモニターをフルセットで揃える構成で、Peace選手の構成がまさにこれに当たります。ただし前述の通り、この価格帯の恩恵を最大限に活かすにはプレイヤー側のスキルも問われる、という点は頭に入れておきたいところです。
結局、どこにお金をかけるべきか
3つの価格帯を比べてみて見えてきたのは、投資対効果に明確な優先順位があるということです。最も効果を感じやすいのはマウスの重量とセンサー精度で、ここは1〜2万円台のモデルでも十分な性能が手に入るようになりました。次に効果を感じやすいのはモニターのリフレッシュレートです。60Hzから144Hzに上げるだけで1フレームあたりの表示間隔は約16.6msから約6.9msまで縮まり、敵の初動を捉えるタイミングが体感できるレベルで変わります。144Hzから240Hz、さらに360Hzへと上げていくほど改善幅は小さくなっていくため、予算が限られているなら「60Hzから144Hz」への最初の一段が最もコストパフォーマンスの高い投資だと言えます。次に効果があるのはモニターのリフレッシュレートで、144Hz以上への投資はプレイ体感が大きく変わります。逆にキーボードやマウスパッド、イヤホンといった部分は、Asuna選手の例が示す通り「慣れているものを使い続ける」という選択肢が十分に合理的です。ラピッドトリガー対応キーボードやガラス製マウスパッドは、感度やDPIの基本設定を詰め終えて「あと一歩」を求める段階で検討すれば十分でしょう。
大会の賞金や選手の収入構造について気になる方は、以前まとめたEWC 2026のお金の最前線もあわせてどうぞ。今回の話と合わせて読むと、eスポーツ業界における「お金の使いどころ」が立体的に見えてくるはずです。
ゲーミングデバイスは沼が深い分野ですが、「高ければ勝てる」わけでも「安ければ十分」というわけでもありません。まずは自分の予算の中で、マウスの重さとセンサー精度、そしてモニターのリフレッシュレートを優先して選ぶ。それだけで、体感できるレベルのプレイ環境の改善が見込めます。
※本記事に記載の価格は2026年7月時点での実売価格の目安であり、販売店やタイミングによって変動します。購入の際は最新価格をご確認ください。


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