こんにちは、Soraです。今回はいつもの大会レポートやパッチ解説とは少し違う切り口で、「世界一を獲った選手たちが実際に何を使っているか」を掘り下げてみます。ゲーミングデバイスのレビュー記事や「プロ使用マウスまとめ」は世の中に山ほどありますが、espologが実際に追いかけてきた大会の優勝者たち――EWC 2026 Apex Legends部門で日本人ロースター初の世界一に輝いた「UNLIMIT」、EWC 2026 VALORANT部門を制した100 ThievesのAsuna選手、そして今もVCT Pacificで戦い続けるZETA DIVISION――この3組の実機材を並べてみると、単なるカタログスペック比較では見えてこない「勝つための選び方」が浮かび上がってきます。
まずは3組の実機材を一覧で比較してみます。
| 選手(チーム) | マウス/コントローラー | キーボード | モニター | 感度 |
|---|---|---|---|---|
| xtsuvi選手(UNLIMIT) | Void Gaming Firebird PS4(PAD) | ─ | SONY INZONE M10S | 感度4・ADS時3 |
| Peace選手(UNLIMIT) | Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2 | Wooting 60HE | SONY INZONE M10S | DPI800・eDPI960 |
| Asuna選手(100 Thieves) | Razer DeathAdder V2 | Corsair K70 RGB Cherry MX Red | ZOWIE XL2546K | eDPI364 |
| ZETA DIVISION(SugarZ3ro/TENNN他) | Razer Viper V3 Pro 等 | Wooting 60HE | ─ | 低感度傾向 |
UNLIMIT|PAD勢2名とマウス勢1名、EWC王者チームの機材構成
ちなみに「今どきのゲーミングデバイスの技術トレンド」を横断的に知りたい方は、以前まとめた2026年のゲーミングデバイス技術動向まとめも参考にしてみてください。今回はその技術が実際に「誰の手元で、どう使われているか」にフォーカスした内容になっています。
日本人ロースターとして初めてEWC本戦を制したUNLIMITは、実は機材構成が興味深いチームです。IGLを務めるxtsuvi選手とYulariman選手はどちらもコントローラー(PAD)勢で、使用機材は「Void Gaming Firebird PS4」。エンジニアぼんじり氏とのコラボモデルで、物理的な摩耗が起きにくいTMRスティックと高精度な6軸ジャイロセンサーを搭載しています。TMRスティックは経年劣化によるスティックドリフトが起きにくい構造で、長時間の練習・大会を戦うプロにとっては地味に重要なポイントです。加えてスティックのスケーリング調整、反応曲線の変更、内側・外側のデッドゾーン設定まで選手ごとに細かく詰められる自由度の高さも、競技シーンで選ばれている理由でしょう。実際xtsuvi選手は視点感度4・ADS時3・反応曲線リニア・デッドゾーンなしという、かなり攻めた設定で戦っています。
一方、キーボード・マウス勢のPeace選手は「Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2」(自社史上最軽量60g、500IPS以上のトラッキング、ポーリングレート2000Hz、バッテリー最長95時間)に、ガラス製マウスパッド「WALLHACK SP-004」、キーボードはアクチュエーションポイント最大0.1mm調整が可能な「Wooting 60HE」という組み合わせ。DPI800・eDPI960というかなり低めの感度で、繊細なエイムを重視したセッティングです。モニターはxtsuvi選手と共通で、Fnaticと共同開発した480Hz対応・応答速度0.03msの「SONY INZONE M10S」、イヤホンも同じく「SONY INZONE Buds」でチーム内である程度機材が統一されているのも興味深いところです。
Asuna(100 Thieves)|世界王者でも“質実剛健”な機材選び
EWC 2026 VALORANT部門でNRGを3-1で下して優勝した100 Thievesのエースであり、リーグ屈指の名手として知られるAsuna選手ですが、その機材は決して「最新・最高級」一辺倒ではありません。マウスは「Razer DeathAdder V2」、キーボードは「Corsair K70 RGB Cherry MX Red」、モニターは「ZOWIE XL2546K」(240Hz)という組み合わせで、DPI1400・感度0.26・スコープ時感度0.7・ポーリングレート1000Hz・Windows感度6、換算するとeDPI364という設定を長年使い込んでいます。DeathAdder V2もK70もリリースからかなり時間が経ったモデルで、価格帯で言えば実売1万円前後、最新の軽量ワイヤレスマウスと比べれば重量も倍近くあります。それでも世界最高峰の舞台で結果を出し続けているという事実は、「機材のスペックより使い慣れた設定と手に馴染む形状の方が大事な場面もある」という、地味だけれど見落とされがちな真実を教えてくれます。
ZETA DIVISION|キーボードは「Wooting 60HE」でほぼ統一
VCT Pacificを戦うZETA DIVISIONでは、SugarZ3ro選手・TENNN選手など複数の主力選手が「Wooting 60HE」を使用しています(なお、この記事で以前ZETA DIVISION所属として紹介していたDep選手は、今シーズンREJECTに復帰しています。訂正します)。60%サイズのコンパクトな筐体でマウスパッドのスペースを広く確保できるうえ、アクチュエーションポイントをキーごとに最大0.1mmまで調整できるラピッドトリガー機能が、低感度でマウスを大きく振るプレイスタイルの選手に特に支持されている理由です。マウスに関してはRazer Viper V3 ProやLogicool G PRO X SUPERLIGHTなど選手ごとに好みが分かれますが、いずれも60g前後まで軽量化された無線モデルという点は共通しています。ちなみにラピッドトリガーとは、キーを「押した深さ」だけでなく「離し始めた瞬間」も検知し、わずかな戻りでも即座に入力をリセットできる機構のことです。従来の物理スイッチでは反応点が固定されていたのに対し、Wooting 60HEのような磁気センサー式キーボードはソフトウェア側でアクチュエーションポイントを自在に変更できるため、左右の切り返しが多いVALORANTのような対人シューティングで一歩速い反応を実現できます。VCT Pacificの他チーム、DetonatioN FocusMeやVARRELの選手たちの機材を見ても、60%キーボード+軽量無線マウスという組み合わせはVCJ全体的な傾向と言えそうです。
余談:筆者(Sora)が個人的に使っている「Pulsar PCMK 3HE 60」について
ここまで挙げてきたのは選手が実際に使っている機材ですが、少し余談を挟みます。私自身、普段の記事執筆や配信視聴のお供として、Pulsar Gaming Gearsの磁気スイッチキーボード「PCMK 3HE 60」を使っています。Wooting 60HEと同じホールエフェクト方式でラピッドトリガーに対応しており、アクチュエーションポイントは0.1mm単位で調整可能、ポーリングレートは8000Hz・スキャンレートは35,000Hzと、スペック表だけ見ればむしろ上回っている項目もあるくらいです。実際に使ってみて一番気に入っているのは打鍵音で、静音寄りのコトコトとした軽い音なのに底打ち感はしっかり手に伝わってくるので、長時間のタイピングでも疲れにくく感じます。マットな質感の筐体にシンプルな配列というデザインも主張しすぎず、机の上に置いていて素直に気に入っています。実売23,980円(JIS 65キー版)とWooting 60HEより1万円前後安いのに、性能面で明確に見劣りする部分が見当たらないので、コストパフォーマンスを重視するならかなり有力な選択肢だと思います。TKLサイズ(91キー・26,470円)や、期間限定のBruce Lee 85th Anniversary Edition(25,149円)といったバリエーションもあるので、サイズ感や見た目にこだわりたい人はそちらも比較してみてください。
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3チームから見える共通トレンドと、価格で見る現実
今回並べた3つの事例から見えてくる傾向は大きく2つ。1つ目は「軽量ワイヤレスマウスの一強化」で、60g前後まで軽量化された無線マウスがPC勢のプロシーンではほぼ標準装備になっています。2つ目は「ラピッドトリガー対応キーボードの普及」で、Wooting 60HEのようにアクチュエーションポイントを選手ごとに調整できるモデルが複数チームで採用されています。価格で見ると、Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2が実売2万円前後、Wooting 60HEが3.5万円前後と、こだわりのギアはそれなりの投資になります。一方でAsuna選手のように1万円前後のマウス・キーボードで世界を獲っている選手もいるという事実は、「機材にお金をかけなければ勝てない」という思い込みへの反例としてぜひ覚えておいてほしいところです。
ゲーミングデバイス選びで大事なのは、プロと同じ機材をそのまま揃えることよりも、感度やDPIといった「設定」を参考にしつつ、自分の手のサイズやプレイスタイルに合った1台を見つけることです。今回紹介した機材はどれも実売されているモデルなので、気になったものがあれば店頭で実際に握ってみることをおすすめします。
予算別に見る「プロ機材に近づける」組み合わせ
とはいえ「じゃあ自分は何を選べばいいのか」という疑問が残ると思うので、予算別に方向性を整理しておきます。まず1〜1.5万円程度で組みたい場合は、Asuna選手のように定番の有線~軽量ワイヤレスマウスと、標準的なメカニカルキーボードの組み合わせで十分戦えます。実際に最新モデルの中にもこの価格帯で60g前後まで軽量化されたワイヤレスマウスが登場してきており、数年前なら3万円クラスにしかなかった性能が手に入りやすくなっています。次に2〜3万円のミドルレンジでは、Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2やRazer Viper V3 Proのような軽量無線マウスが射程に入ってきます。ここまで来ると重量・トラッキング精度ともにプロ使用モデルとほぼ同等です。最後にラピッドトリガー対応キーボードまで揃えたい場合、Wooting 60HEクラスで3〜4万円というのが現在の相場観です。
大事なのは、いきなり全部を最上位グレードで揃える必要はないという点です。まずはマウスの重量とセンサー、次に感度・DPIの設定を自分の手や感覚に合わせて詰めていき、そのうえで「もっと反応を詰めたい」と感じたタイミングでキーボードやマウスパッドをアップグレードしていく、という順番がコストパフォーマンス的にも理にかなっています。
まとめ:機材より先に、まず設定を真似てみる
UNLIMIT・Asuna・ZETA DIVISIONという、フィールドもプレイスタイルも異なる3つの事例を並べてみましたが、共通して言えるのは「機材はあくまで手段であって目的ではない」ということです。PAD勢のxtsuvi選手・Yulariman選手は繊細なスティック操作を追求し、Peace選手やZETA DIVISIONの選手たちは軽量マウス+ラピッドトリガーで反応速度を突き詰め、Asuna選手は使い慣れた機材への信頼を貫く。アプローチは違っても、全員が「自分のプレイスタイルに機材を合わせている」という点では共通しています。
今使っているマウスやキーボードに不満がなければ、まずは今回紹介した選手たちの感度・DPI設定を参考に自分の設定を見直してみるところから始めてみてください。それでも物足りなさを感じたら、そのときが機材の買い替えを検討するタイミングです。
※本記事のデバイス情報は各選手のSNSや専門メディアの公開情報をもとにまとめたものです。契約状況やスポンサーの変更により、大会本番での使用機材が変わる場合がある点はご了承ください。


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